スギは、日本(屋久島から秋田にいたる各地)原産の常緑針葉高木である。
スギを育てる土壌は有機質に富み、深くて水分の多い所が生育によい。
ヒノキやアカマツに比べ乾燥に弱い。
日本では人工造林の40%を占め、吉野、秋田、天竜、日田、飫肥(おび)、
八女のスギの美林は人工林を象徴しているといっても
過言ではない。
雌雄同株でふつう高さ20~50m、幹周り1~2mで、大きいものは幹周り
3~8mに達する巨木もある。
国産の針葉樹では最も大きくなり、屋久島のヤクスギは世界的にも最大級の樹で、
樹齢2000年以上にも達するものもある。
樹皮は赤褐色で厚く、縦に裂け目が入る。枝はやや斜上し、
樹冠は長円錐形であるが老木では先端が丸い。
葉は針形または鎌形で枝にらせん状に配列する。
夏期は緑色であるが、秋冬には褐変する。
雄花は楕円形で黄褐色で6×2㎜で、小枝の先端に穂状に数個~多数集まってつく。
雄花には雄しべがらせん状に並ぶ。
雄しべの先は広卵形となり、その下部に葯が4~5個つく。2~4月に開花し、
風によって黄色の花粉が飛散する。
雌花序(球花)は緑色で球状である。枝梢に1個ずつつく。2~4月に開花し、
10~11月に成熟し、径20~26㎜の木質の球果となる。
種子は60個ほどあり、赤褐色で扁平で小さな翼がある。
スギはそのすべてにおいてもっとも日本人に身近にあって親しまれている樹木である。
その中でも木材としての利用は日本人の文化と生活に深いかかわりを持っている。
スギの木材は、年輪明瞭、辺材白色、心材紅色ないし暗褐色でその境界は明瞭、
軽軟、強靭、割裂性大、切削などの加工および
乾燥容易、保存性中位で特有の香りを放つ、などの特徴を持っている。
このように材質がかなり優れているうえに、植林された樹木は成長がよく、
品質のそろった良材を多量に入手できることから
広い用途がある。
おもな用途に建築材、器具材、土木、船舶材などがある。
また特殊な用途も、京都北山杉の磨き丸太や、紀州の清酒用酒樽などから、
包装用の経木や木毛など多岐にわたっている。
一方、樹皮は屋根ふきに、枝葉は線香の原料にと、
その樹体のすべてがじつにむだなく用いられ、プラスチック類が氾濫する前の、
日本人の生活を支えてきたといえる。
約2万年前の氷河期の最寒冷期のころは現在よりも気温がかなり低かったため、
スギは日本の南西地方にわずかに生きていたに
すぎなかった。
その後の地球全体の温暖化にともなって北上を開始し、
縄文時代には西日本から本州日本海側、そして東海地方へと分布を
広げ、それらの地方の遺跡からは丸木舟や板、柱などが多数出土している。
割って板を得やすいスギの特質は弥生時代の稲作と強く結びつき、
静岡県登呂遺跡などに見るように畔や水路の矢板や杭に
用いられて低湿地の水田開発を支えたことがわかる。
歴史時代になるとスギの利用はさらに広まり、
スギ文化ともいえる日本に独特の文化を形づくってきたといえる。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]
【追記】
スギ属は、スギ科とする見解もあるが、ここではヒノキ科のスギ亜科スギ属とした。
以上は、図鑑に基づきスギの利点をおもに述べたが、
ここで触れないわけにいかないのが、
スギ花粉症である。
私も御多分に漏れず、スギ花粉症に長年お世話になっているが、
年をとったせいか近年は
症状が軽く助かっている。
しかし、これがこれから先も続くとは限らないので憂鬱の種である。
ご存じのとおり、二枚目(左)が、乾燥したスギ花粉の拡大画像である。
スギ花粉の大きさ : 直径30~40μm(3~4/100mm)
(左の画像の直径が約50㎜に見える方は、実物は約140万分の1である)
スギ花粉の形状 : 突起(写真上)がある。花粉は、周囲を殻に包まれている。
(ヒノキ花粉も同じような形状をしているが、突起がない)
だそうである。