トウキビ(唐黍)、ナンバンキビ(南蛮黍)
イ ネ
ゼ ア(トウモロコシ)
Zea mays
ゼア・マイス
Corn , Indian corn , Mealies ,
Maize , Guinea wheat , Turkey heat
メキシコ、ペルー、ボリビア原産
一年草
トウモロコシは、トウモロコシ属の1種で果実を食用にする野菜である。
トウモロコシを、別名のトウキビまたはナンバンキビとよぶ地域も多く、
たんにキビまたはナンバンとよんでいるところもある。
トウモロコシは、丈の高い丈夫な一年草で、稈は高さ約4.5mにもなり、基部には吸枝が発生する。
葉は2列に並び、葉鞘は互いに重なり合う。
他の多くのイネ科植物と異なり、
ジュズダマ属と同様に単性小穂をつけるのが大きな特徴である。
雄性小穂は頂生の長い総状花序に集まり、
円錐花序をつくる。雌性小穂は腋生で、
肥大した花序軸に列をなして穂状につき、
数個の大きな葉状苞に包まれ長い花柱をもつ。
一枚目(右上)が、雌花序で糸のようにたくさんの
雌しべが総苞から長く伸びている。
二枚目(左)が、雄しべであり、小穂からなり各小穂は2小花からなる。
最初に渡来したころ、これが中国から入ったものとして唐、
あるいは南方から入ったため南蛮の黍(モロコシ)とよぶようになった。
欧米ではメンズ( maize )
に相当する語が専門語で、コーン(
corn )はトウモロコシをさすほかの穀物、
穀粒を表すことがある。
トウモロコシの起源の年代は古く、考古学資料によれば、
メキシコでは前5000年ごろには野生種が分布し、
その栽培型は前3000年ごろにはすでに成立しており、
農耕が成立した前2000年ごろには、
現在のような立派な穂型が存在するまで進化していた。
一方、ペルー、ボリビア地域では、
最初の考古学資料は前1400~前1200年の間の新しいものであるが、
メキシコの同時代のものとは比較にならないほど小さい穂型である。
したがって、少なくともメキシコとペルー、ボリビア地域の2つの地域で、
同一の野生祖先種より由来したものと推定される。
メキシコの栽培型は早くから北アメリカまで広く栽培された。
ヨーロッパへの伝播は、新大陸発見時にキューバからスペインに持ち帰ったのが最初である。
その後30年間にフランス、イタリア、トルコさらに北アフリカまで伝播し、
アフリカ各地には16~17世紀の間に普及した。アジアには16世紀初め、
ポルトガル人によって導入され、インド、チベット経由、
あるいはトルコ、イラン経由で中国へ入った。日本へは1579年
(天正7)にポルトガル人が長崎に入れたのが最初であるが、
明治初年に米国から北海道に入り、北海道で盛んに栽培された。
トウモロコシの種類は、果実の形や性質によって分類されている。
すなわち、胚乳がタンパク質を含んだ硬質デンプンと
タンパク質を含まない軟質デンプンとからなり、
これらの2つのデンプンが胚乳内のどこに分布しているかで形が変わり、
用途も違ってくる。
これらは変種として位置づけられており、
デントコーン ( var. indentata :馬歯種)、
フリントコーン( var. indurata :硬粒種)、
スイートコーン( var. rugosa :甘味種)、
ポップコーン ( var. praecox :爆粒種)などである。
これらのうち生食および缶詰用として利用されているものはスイートコーン類である。
ほかは食品原料、飼料、菓子用で、野菜としての利用はきわめて少ない。
スイートコーンは、ショ糖からデンプンへの転換を干渉する劣遺伝子をもち、
胚乳には糖分が多い。なかでもスーパースイートコーン、一般にはハニーバンタム
( honey bantam )
で知られているものは、デントコーンから育成されたといわれてる栽培品種群で、
乾燥した子実は著しくしわができ縮んでいる。
甘味がとくに強く、長持ちするが種皮が厚いので加工用には適さない。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]