ヨモギは、北半球に分布している多年草である。
日本のいたるところに多く、若菜を餅につき入れたり、
葉から灸(きゅう)のもぐさをつくる。
茎は高さ50~100㎝で多く分枝する。
茎の中部の葉は長さ6~12㎝で幅4~8㎝で羽状深裂~
中裂し裂片は2~4対で、下面に灰白色のくも毛がある。
上部の葉は小形になり羽状中裂または3中裂で、
花序につく葉は線形である。
頭花は複総状に多くつき、径約1.5㎜と非常に小さい。
ヨモギは、ヨモギ属の1種で、葉を食用とする。
春、若芽を摘み、ゆでてアク出しをしてから、
餅につきまぜて草餅にしたり、だんごにする。
一度乾かしたものを使用する方が風味がよいとされる。
また、生葉およびやわらかい茎の先端は、うすめにといた衣をつけ、
低めの温度でゆっくり揚げ、てんぷらとする。
アク抜きをした後、ひたし物や汁の実とするほか、
油いためやヨモギ飯とする。
また、細かくきざんだあと、醤油、化学調味料で煮て佃煮とする。
葉を煎じて塩味をつけ、ヨモギ茶として飲む。
成熟葉を乾かし、もんで綿毛だけを残してモグサ
(熟艾(じゅくがい))をつくる。このモグサは灸に使われるほか、
昔は印肉や矢立の墨壺に用いられた。
ヨモギの葉は、生葉100g当り、タンパク質5.2g、脂質0.8g、
糖質1.5g、繊維3.0g、灰分2.3g、カルシウム70㎎、リン25㎎、
鉄15㎎、ビタミンA2300IU、カロチン700IU、
ビタミンB10.15㎎、B20.28㎎、
ビタミンC70㎎、ニコチン酸3.0㎎を含有するほか、ビタミンDを含む。
ヨモギ属は、北半球に約250種がある。
日本にも30種があり、特産種もある。
古代から薬用植物または食用植物として重要であったが、
観賞用植物もある。
多年草または一年草ときに亜低木もある。
葉は互生し、多くは細かく切れ込むが、まれに鋸歯縁である。
多くは綿毛があるが、まれに無毛もある。
花は風媒で、頭花(頭状花序)は小さく、舌状花はない。
縁に雌花があるかまたはない。
花冠は筒状で結実する。中の両性花は筒状で5歯があり、
結実するかまたは不稔である。
雄しべは5個で花筒につき葯は合生し、葯の下部は鈍形である。
雌しべは子房下位で、花柱は1個で先は2裂し、
裂片の先は切形でときに不稔のものでは分裂せずに頭状となる。
果実は痩果で倒卵形で先は円く、冠毛はないか、
ごく短い環がある。花床は無毛または密毛がある。
キク属に近い虫媒花から昆虫のいない砂漠に適応して風媒花になったもので、
花粉がこぼれやすいように下向きに咲く。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]
四枚目(左最下段)は、虫えい(虫癭:ちゅうえい)
でヨモギワタタマバエによって茎に形成される
直径2.0㎜の球形の虫えいであるが、
表面には白色の長毛が密生し直径10.0~15.0㎜の綿塊のようになる。
虫えいそのものの側壁は薄いが堅く、
内部には胸骨のない橙赤色の幼虫が一匹入っている。
虫えいの和名は「ヨモギクキワタフシ」であり、「ヨモギ」の
「クキ」にできた「ワタ」状の「フシ [ 虫えい ]」という意味である。
なお、虫えいの名前は、植物の種類と虫えいのできた場所や形なとで決まり、
名前の最後につく「フシ」とは、「えい」を意味する言葉
として、虫えい和名の語尾にフシをつけるようになったそうである。