サクラソウは、日本、朝鮮半島、中国東北部に自生する多年草で、
国内では四国と沖縄には分布がない。
早春のころ休眠していた根茎から芽を出し、
やわらかい毛に包まれた葉を開く。
桜の花が終わる頃、株の中心から高さ15㎝内外の花茎をだし、
散形状に数花をつける。
花の基部は筒状で、上部は5つにきれて平開し、
裂片の先端に切れ込みがあり、桜に似た形となる。
サクラソウの園芸品種は、現在約300種が存在し、
趣味の愛好家の団体を中心にして保存と普及がはかられ、
毎年各地で展示会が行われている。
サクラソウの園芸品は、種間交雑によるものではなく、
ただ1種の変異の中ででき上がってきたので、
その変異の幅はおのずと限界があるが、
かなり高度な変化をとげている。
サクラソウの花を変化のおもしろいものにしているのは
花冠裂片の先端の形状で、桜の花のように先端が
2裂した標準形を桜弁として最も多く、スプーンのように丸みをもった梅弁、
切れ込みのない丸弁、花冠裂片が広くてひだのできる波打弁、
弁縁に多数の切れ込みがあるかがり弁などの変異がある。
花の立体的な形を花容と表現し、平開するものを平咲き、
少し花冠裂片がふくらみをもつものを浅抱え咲き、
深いものを深抱え咲き、さらに丸い物をつかむような形をつかみ咲き、
まったく丸くなったものを玉咲きという。
抱え咲きの変化で裂片の先が内側に折れているものを
星咲きまたは五尖咲き、裂片が波打つものを狂い咲き、
フリンジ(房飾り、総(ふさ)べりのことで、糸、紐、布、
飾り房などを縁に飾りつけること)するものを獅子咲きといい、
花冠裂片の形と一体となって多様な変異をとげている。
花色は淡紅色を原形として、桃色、紅、紫、白、絞りなどがあり、
表裏同色のものより、表が白く裏に色彩を表すものが多い。
古くは表が純白で、裏側に美しい色のあるものが優秀花として
珍重されたが、変化の鮮やかさと、
野生種からもっとも変化をとげたという点で、
現在でも園芸的にもっとも優れた色調の園芸品種ということができる。
プリムラのように、学名の種小名(種の形容詞)に「シーボルディー」
とつくものがままあるが、これは長崎出島のオランダ商館付医師として来日し、
日本の植物を研究したドイツ人のシーボルト氏の名にちなみ付けられたものである。