ヨウナシは、ヨーロッパ中部から西アジアに分布するが、
野生化した栽培品種との区別は困難である。
高さ15~20mに達する常緑高木で、枝条は直立性である。
葉は卵形ないし長楕円状卵形で、光沢のある緑色である。
果実は緑色で、倒円錐形であるが、形に変化が大きい。
果実は落果後に追熟して初めて軟化する。
現在、「西洋梨( pear )」
とよばれて世界中で栽培されているものは、
全て本種が基本となって、一部
P. nivalis が交雑され
改良淘汰されたものと見られている。
これらの栽培品種群は一括して本種の変種 [
var. sativa ]
として区別されている。
画像(右上)は、広島県人さんが、次のコメントをつけて、
私に送ってくれたものである。
『 洋ナシの花が、畑に咲きました。実がなったら、
UPしますので楽しみにしていてくださいね。』
本属の仲間は、
ナシ 、
マメナシ を掲載している。
ナシ属は、ユーラシア大陸、北アフリカの温帯、暖帯に数十種が分布し、
日本にもいくつかの野生種が報告されている。
落葉まれに攀常緑の高木または低木で、小枝は針になることがる。
葉は有柄で互生し、多くは鋸歯を有し托葉がある。
花は両性で散房状花序につきふつう白色で多くは短枝につく。
花弁、萼片はともに同数で5個あり、
萼片は果実に宿存する場合としない場合がある。
雄しべは20~30個である。
花柱は3~5個あるが、基部で合生する。子房は下位で、
花床に包まれ、花柱と同数の心室からなり、各室に2個の胚珠を含む。
果実は梨状果で食用とする部分は肥大した花床である。
果皮下と果芯部に石細胞群を有する。種子は黒色で光沢がある。
世界の主要果樹のひとつで、おもに果樹として広く栽培されているが、
春出葉のころ咲く花が豊富で美しいので、欧米では
観賞用にも栽培されている。
【栽培品種群の来歴】
ナシには、大きく分けて、日本梨、西洋梨、
中国梨の3つに分けられるが、ここでは西洋梨のみを記する。
ギリシア時代の書(紀元前3世紀)やローマ時代の書に
それぞれ増殖方法や栽培品種が記載されており、
紀元前から栽培されて
いたことがうかがわれる。
しかし、西洋梨の栽培が温暖な地中海沿岸地域で軌道にのったのは
それからずっと後の11世紀以後である。
その後17世紀に入って北ヨーロッパでの栽培が盛んになり、
主としてベルギーで品種改良が行われ、北ヨーロッパの風土に適する
今日の栽培品種が育成され、日本へは明治初年に開拓使によって輸入され、
その後多くの栽培品種の栽培が各地で試みられた。
しかし、夏期に高温多雨の中部以南では樹が徒長し、
花芽着生が不良となり、また北海道や東北では夏期の雨が少ないものの
気温が低く適応品種も限られる。
したがって、夏期の気温、雨量の点から、
北ヨーロッパに近い条件にある山形県、
長野県で小規模に栽培されているにすぎない。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]