キイチゴ属は、落葉または常緑の低木まれに草本で、
熱帯から寒帯に数百種が分布し、北半球に多い。
日本にも8亜種、約40種が自生するが、
雑種ができやすく分類の困難な属である。
茎はふつう短命で多くは刺がある。葉は互生し、
単葉または複葉で基部に托葉がある。
花は花枝の先に単生または集散あるいは円錐状の花序をつくって咲く。
萼筒は浅く、萼片も花弁もふつう5個である。
子房は成熟すると多汁質の石果になって集合果をつくり、
花床は肥大しない。
集合果が花床とともに離れるものと花床を残して離れるものがある。
果実はふつう赤、ときに黄、黒、白色に熟して食べられる。
欧米では果樹としてラズベリー、
ブラックベリーなどの改良種が多数栽培されている。
観賞用は少ないが、強勢で適応性が強く陰地でもよく育つので、
土地の被覆、保全用などにも植栽される。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]
【キイチゴ類】
キイチゴを果樹としてあつかう場合は、
一般に「キイチゴ類」として、分類することが多い。
果樹としてのキイチゴ類は、
キイチゴ属の数種と改良栽培品種が利用されており、
果実を生食したり、ジャムやジュースなどに
加工する。
栽培種には雑種性のものが多く、
基本種と関係が明らかでないものも少なくない。
園芸上は、栽培品種をラズベリー、ブラックベリー、
デューベリーに分ける。
ベイリー氏によると、キイチゴ属は7節に分類され、
現在の栽培種は次の2節に分類される。
① イダエオバツス節
英語でラズベリー、ドイツ語でヒンベーレと
よばれるものすべてを包含する。
共通する特徴は、枝は概して直立性で、
花床は乾硬質で、果実は成熟すると花床から容易に離脱する。
離脱した果実は中空で帽子状を呈するので、
キャップと覆盆とよばれている。形がくずれやすい。
② エウバツス節
英語でブラックベリーおよびデューベリー、
ドイツ語でブロンベーレとよばれるものすべてを包含する。
共通する特徴は、花床は柔軟な肉質で集合果に密着しており、
果実は成熟すると花床をつけたまま花盤から離脱するので形くずれしない。
ブラックベリーとデューベリーの相違点は、
前者の枝は直立またはつる性で、花序は散房または総状形で、
開花は基部から順次先端部におよぶのに対し、
後者の枝はほふく性で、花序は集散形で、
開花時は中心部から周囲におよび、1花序中の花数が少ないなどがある。
本属の仲間は、 カジイチゴ 、 クサイチゴ 、 フユイチゴ 、 ブラックベリー などを掲載している。