テンナンショウ属は、球茎を有する夏緑の多年草で、
東アジアを中心に100種以上が分布しており、マレーシアの山地、インド南部、
アフリカ東部山地さらに北アメリカからメキシコにも分布している。
地下茎は一部の種では横に長くはうが、多くの種では短縮し扁球形の球茎になる。
球茎からは子球を出したり、ときには長い走出枝を出すこともある。
熱帯山地には数個の常緑の葉を出す種もあるが、
温帯の林床に生育する種では1~2個の夏緑性の葉を出す。
ふつう葉の下部は巻き重なるか、または筒状になり、
茎のような形態を示す葉鞘になり偽茎を形成する。
葉身は3~多数の小葉に分裂し鳥足状あるいは車輪状に配列する。
偽茎の基部には葉身をもたない鱗片状の葉が2~数個ある。
偽茎から出る花茎には仏炎苞に包まれた1個の肉穂花序を頂生する。
仏炎苞は緑、紫、暗紫、赤紫色で、粉白を帯びたり、
白い縦縞が入ることも多い。
その下部は筒状で、上部は舷部とよばれ、舌状、
ほろ状あるいはあぶみ状になり、筒状部の口部をおおう。
肉穂花序は雄花または雌花を多数つける。
一部の種では小形の時期は雄花のみで、大きくなると雄花と雌花をつけるが、
大部分の種では雄花、あるいは雌花をつけるという
性の転換を行う。また、この両型の中間的な性転換を行う種もある。
肉穂花序の頂には付属体があるが、
付属体はごく短い退化的なものから棒状あるいは糸状に長く伸びる種まである。
花に花披はない。雄花は1~数個雄しべが集合する。
葯は卵形から球形であるが、特殊なものでは環状のドーナツ形になる。
雌花には花披も雄しべもなく、雌しべだけで、
子房は1室で胚珠は基底胎座に2~20個つく。
果実は液果で赤熟する。種子はデンプン質の胚乳を有する。
テンナンショウ属は、雌雄偽異株とよばれる雌雄異株性を示すが、
このような性の転換をする植物は珍しくサトイモ科の中でも
特異的な群である。
テンナンショウ属は、温帯系のサトイモ科植物の中ではもっとも分布域の広い群で、
南アメリカとオーストラリアを除く全大陸に
育成する。
種数も多く、その系統的な関係はいまだ十分に解明されていない。
いくつかの種が、その異様な形態が好まれてか山草として栽培され、
また薬用や食用にされる種を含む。
テンナンショウ属の植物は温帯の林床によく適応した多年草であり、
種子から成体までの生育には長年月を要するので、
地方的な固有種を絶滅させることがないようにしたいものである。
[ 引用 : 園芸植物大事典
( 塚本洋太郎総監修:小学館発行 ) ]
画像(右上)は、こまさんが、『 今年もテンナンショウに会いました。 』 とのコメントをつけて、私に送ってくれたものである。
本属の仲間は、
コウライテンナンショウ 、
ツクシヒトツバテンナンショウ 、
ウラシマソウ 、
マムシグサ 、
ユキモチソウ
などを掲載している。